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DATE : 2025/01/20 (Mon)
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DATE : 2009/04/18 (Sat)
山之口獏には、思わずニヤリとしてしまう詩がたくさんある。
「頭を抱える宇宙人」もその一つだし、この「税金のうた」もまた、
ユーモアに溢れている。

詩の内容は、どうにも貧乏な生活の一場面であるのだが、
なんとも、ほのぼのとした雰囲気が漂う。


税金の歌

地球のうえを
ぼくは夢中で飛び廻った
税金ならばかかって来ないほど
ぼくみたいなものにはありがたいみたいで
かかって来てもなるべく
税金というのはかるいほど
誰もの理想に叶っているのではなかろうかと
ぼくはそのようにおもいながらも
免税を願っているのでもなければ
差し押さえなんぞくらいたいほどの
物のある身でもないのだ
ぼくは自分の家庭に
納めなくてはならない筈の生活費でさえも
現在まさに滞りがちなところ
税金だけは借りてもなんとか納めたいものと
地球のうえを
金策に飛び廻った
ところが至るところに
ぼくは前借のある身なのであったのだ
いま地球の一角に
空しく翼をやすめ
どんな風にして税金を納めるかについてぼくは考えているところなのだ
文化国家よ
耳をちょいと貸してもらいたい
ぼくみたいな詩人が詩でめしの食えるような文化人になるまでの間を
国家でもって税金の立替えのできるくらいの文化的方法はないものだろうか


脱税で摘発されているような方たちには、理解できない詩かもしれませんが。
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DATE : 2009/04/06 (Mon)
草野心平の詩に、カエル語で書かれた詩がある。
カエル語?発想がすごすぎて、ぐうの音も出ないとはこのことか。

トノサマガエルの「ごびらっふ」が語る、幸せとは?
という哲学的問題。
カエル語の語感のなんとも言えない心地よさ。
草野心平ってやっぱりスゴイです。



 ごびらっふの独白

るてえる びる もれとりり がいく。
ぐう であとびん むはありんく るてえる。
けえる さみんだ げらげれんで。
くろおむ てやあら ろん るるむ かみ う りりうむ。
なみかんた りんり。
なみかんたい りんり もろうふ ける げんけ しらすてえる。
けるぱ うりりる うりりる びる るてえる。
きり ろうふ ぷりりん びる けんせりあ。
じゆろうで いろあ ぼらあむ でる あんぶりりよ。
ぷう せりを てる。
りりん てる。
ぼろびいろ てる。
ぐう しありる う ぐらびら とれも でる ぐりせりや ろとうる ける ありたぶりあ。
ぷう かんせりて る りりかんだ う きんきたんげ。
ぐうら しありるだ けんた るてえる とれかんだ。
いい げるせいた。
でるけ ぷりむ かににん りんり。
おりぢぐらん う ぐうて たんたけえる。
びる さりを とうかんてりを。
いい びりやん げるせえた。
ばらあら ばらあ。


 日本語訳

幸福といふものはたわいなくつていいものだ。
おれはいま土のなかの靄のような幸福に包まれてゐる。
地上の夏の大歓喜の。
夜ひる眠らない馬力のはてに暗闇のなかの世界がくる。
みんな孤独で。
みんなの孤独が通じあふたしかな存在をほのぼの意識し。
うつらうつらの日をすごすことは幸福である。
この設計は神に通ずるわれわれの。
侏羅紀の先祖がやってくれた。
考へることをしないこと。
素直なこと。
夢をみること。
地上の動物のなかで最も永い歴史をわれわれがもってゐるといふことは平凡ではあるが偉大である。
とおれは思ふ。
悲劇とか痛憤とかそんな道程のことではない。
われわれはただたわいない幸福をこそうれしいとする。
ああ虹が。
おれの孤独に虹がみえる。
おれの単簡な脳の組織は。
言わば即ち天である。
美しい虹だ。
ばらあら ばらあ。


この詩、なんと絵本になってます。
編集者が「声に出して読みたい日本語」の、齋藤孝氏です。
なるほど。



DATE : 2009/03/24 (Tue)
コトバによる表現に関心を持ち始めてから、誰もが教科書で読んだことがあるであろう中原中也をイメージして、詩集などを本屋で眺めたことがあった。
その当時以降、買い求めた思潮社の「現代史文庫」のシリーズは今でも本棚に何冊か並んでいる。

その時期と前後して、周囲の人達の影響で「高田渡」の存在を知った。教えてくれた人は、ギターをジャカジャカ、自衛隊へ入ろ~♪ と歌ってくれた。

・・・現代詩と高田渡、知ってる人には当然のように馴染み深い組み合わせ。当時の自分には衝撃的な組み合わせ。そして知ったのは、詩人・山之口獏。
高田渡がその詩を多く取り上げた中でも、タイトルからしてすでにユーモラスな「頭を抱える宇宙人」。

1976年に発表されたアルバム 「FISHIN’ON SUNDAY」に、この曲は収録されている。


頭を抱える宇宙人

青みがかったまるい地球を
眼下にとおく見おろしながら
火星か月にでも住んで
宇宙を生きることになったとしてもだ
いつまで経っても文なしの
胃袋付の宇宙人なのでは
いまに木戸からまた首がのぞいて
米屋なんです と来る筈なのだ
すると女房がまたあらわれて
お米なんだがどうします と来る筈なのだ
するとぼくはまたぼくなので
どうしますもなにも
配給じゃないか と出る筈なのだ
すると女房がまた角を出し
配給じゃないかもなにもあるものか
いつまで経っても意気地なしの
文なしじゃないか と来る筈なのだ
そこでぼくがついまた
かっとなって女房をにらんだとしてもだ
地球の上での繰り返しなので
月の上にいたって
頭をかかえるしかない筈なのだ

山之口獏 詩集「鮪に鰯」 昭和39年発表

鮪に鰯―山之口貘詩集 (1972年)
山之口貘詩文集 (講談社文芸文庫)

FISHIN’ON SUNDAY
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